2月15日、第9回再審公判開かれる

2月15日、第9回再審公判 弁護団陳述

5点の衣類の色2

第1  はじめに

本日の検察官の血痕の色調変化に関する立証は、5点の衣類が1年以上 1号タンクでみそ漬けにされた場合、血痕に赤みが残る抽象的な可能性を指摘しているにすぎません。本日の検察官の立証では5点の衣類に赤みが残ることを合理的な疑いを超えて証明できていません。5点の衣類に赤みが残ることが間違いないと立証されたとはいえません。清水・奥田意見、石森意見に対する反証としては不十分です。

これから、共同鑑定書に対する反論等の意見書・鑑定書4通と清水・奥田意見を裏付ける文献等の取調べを行います。

第2 立証事項 1 文献等

まず、清水・奥田意見を裏付ける文献等です。

① 法医学入門(全訂新版)(抄)(再弁書 382)

法医学の基本的な文献に体外に出た血液が乾いても光や空気の影響で褐変することが記載されています。

② 「吐血・下血」と題するウェブサイト出力文書(再弁書 383)

酸性の影響で血液が黒褐色化することが裏付けられます。

 

2 清水惠子教授外作成の意見書( 再弁書343)

共同鑑定書に対する清水教授及び奥田助教の反論の意見書です。主に以下の内容を立証します。

① 共同鑑定書は血痕の赤みが消える抽象的な可能性を指摘するにすぎず科学的にも反証となっていないこと

② 1号タンクに5点の衣類が隠された状況を具体的に想定し、新たにみそが仕込まれ発酵が進み嫌気的な環境になるまでの期間だけでも、血痕の赤みが消えるのに十分な酸素の供給があること

③  そもそも、血痕の赤みが消えるのに必要な酸素量は極めて微量であり、1号タンクには血痕の赤みが消えるのに十分な酸素量があったこと

④   みそ漬けの環境で生じる高浸透圧の環境でも溶血が生じることが文献により裏付けられていること

⑤   清水・奥田鑑定がモデル化実験を行ったことは科学的に正しいこと

⑥   その他の共同鑑定書の指摘も清水・奥田鑑定の結論を左右するものではないこと

 

3 奥田勝博助教作成の鑑定書(再弁書367)

共同鑑定書は、奥田助教がサラシに血液を滴下して色調の変化を観察した実験に対して、生地が薄いことを問題視しています。そこで、奥田助教は、サラシよりも厚みのあるメリヤス生地に血液を滴下し、色調の変化を観察する実験を行いました。鑑定によって、厚みのあるメリヤス生地であっても、pH5かつ塩分濃度10% の環境では数日以内に血痕の赤みが消失することを明らになります。

4 石森浩一郎教授作成の意見書( 再弁書344)

共同鑑定書に対する石森教授の反論の意見書です。主に以下の内容を立証します。

① 血液と血痕の違いに関し、みそ漬けの環境であれば血痕であってもみそ中の水分が浸透し、その溶存酸素によってヘムは酸化すること

② みその仕込み段階で踏み込んだり、重石を載せて空気を抜く作業をしていても、みそ原材料中に存在する酸素の濃度は大気と同程度であり、その水分中の溶存酸素によって血痕の褐変は進行すること

③  みその発酵の最終段階においても溶存酸素は存在すること

④  みそ漬けの低pH、高塩分濃度の環境はヘモグロビンからヘムが遊離しやすい環境であり、検察官実験に比べ1号タンクの環境の方が8トンのみそによって水分が衣類に染み込みやすく酸化反応が生じやすいこと

⑤ みそ漬けの環境のうち特に低pHと高塩分濃度に注目した清水・奥田鑑定は科学的に正しい判断であること

⑥  結論として清水・奥田鑑定は科学的に妥当であること

5 石森浩一郎教授作成の補充意見書(再弁書345)

差戻審において、石森教授は、みそ中の酸素濃度に関し、同じ発酵食品である清酒の場合と比較し、「清酒を使った実験では0.1% 程度になるという報告がありました」等と述べた上で、みその場合は清酒ほど酸素濃度が低くならないという証言をしています。

この補充意見書は、検察官からこの証言の意味を尋ねられたことに対する回答です。

石森教授のいう「報告」とは、「清酒醸造における溶存酸素濃度の影響」という文献です。石森教授は、この文献の発酵の進んだ清酒の溶存酸素量の数値に基づき、「0.1%」を「清酒の場合、発酵により、その溶存酸素量は少なくなり、溶存酸素量の最大値の0.1%程度なり、それは大気に比べ酸素濃度が0.1%程度の気体が清酒に溶けたときの酸素量に対応する」という大気の場合と比較した相対的な意味で使っています。

第3  結論

以上の立証と3月に予定されている清水教授、奥田助教、石森教授の証人尋問によって、5点の衣類の血痕の色調変化に関する検察官の反証によっても、清水・奥田鑑定の結論がゆらがないことが明らかになります。

5点の衣類が1年以上みそ漬けにされれば、血痕の赤みは消失します。実際の5点の衣類の血痕に赤みが残っていたことは、5点の衣類がねつ造であることを示しています。

以上