味噌漬け実験報告書

2008年4月14日
袴田厳さんを救援する清水・静岡市民の会:山崎俊樹
袴田事件弁護団弁護士:小川秀世

1.実験日時及び場所
・血液採取及びステテコ・半袖シャツへの付着
2008年4月8日(火曜日)午後12時から12時30分まで
・味噌漬け実験
2008年4月13日(日曜日)午後1時から5時まで
静岡市清水区宮代町5番75号「辻生涯学習交流館」第一会議室

2.使用したもの
(ア)衣類
白半袖シャツ(メリヤス生地)及び白ステテコ(さらし生地)は、新品をそれぞれ2着ずつ購入し、着用後洗濯し自然乾燥させることを2回繰り返した。
ねずみ色スポーツシャツ平織及び鉄紺色ズボンウール地は新品をそれぞれ1着ずつ購入し、水洗い後自然乾燥させた。
青タオル地ブリーフは、新品のまま使用した。
その他白木綿メリヤス生地9枚約30cm四方のもの
(イ)麻袋
麻袋は、使用回数は不明であるが、何回か使用を繰り返されたものを4枚購入し、3枚を使用した赤七代替品と呼ばれるもので、用途は米、大豆など穀物を入れるもの。
(ウ)味噌
醸造開始から1年以上経過した赤味噌30kg(酵母が生きており発酵が進むもの)
Y味噌製「田舎みそ」1Kg入りのものを2袋
味噌漬け実験報告書写真
(エ)味噌のたまり液味噌が熟成するときに発生する液体
M味噌株式会社製600ml入ボトル12本(醸造過程によって色が異なるため、濃い色のもの8本、薄い色のもの4本を用意した。)
味噌漬け実験報告書写真
(オ)対照写真
昭和42年9月20日付佐藤秀一作成の鑑定書(17分冊2348丁以下)添付の白半袖シャツ及びステテコのカラー写真を複写したもの(A3サイズを用意した。
(カ)その他
計測道具、バケツ、たらい、ポリ手袋、ゴム長靴など。

3.実験実施者
袴田厳さんを救援する清水・静岡市民の会会員数名
小川秀世弁護士、伊豆田悦義弁護士
なお、実験経過は、デジタルカメラ、ビデオカメラによって記録した。

4.血液の付着
2008年4月8日、実験協力者2名からそれぞれ血液25ccを採血し(抗凝固剤は使用しない)、直ちにステテコ2枚、白半袖シャツ2枚及びメリヤス生地小片9枚に適宜付着させ、その後それらを自然乾燥させた。

5.第1実験
血液を付着させたメリヤス生地の味噌漬け
①実験1
(1)赤味噌600gと濃い色のたまり600mlを混ぜ合わせる。
味噌漬け実験報告書写真
混ぜ合わせているところ


(2)上記の溶液に,人血を付着させたメリヤス生地をそのままつけ込み、すぐに取り出す。
味噌漬け実験報告書写真
取り出したところ


(3)取り出した生地を水の中に入れて軽くゆすぎ、付着した味噌を落とす。
味噌漬け実験報告書写真
水の中でゆすいでいるところ


味噌漬け実験報告書写真
水から出したところ


(4)戸外で自然乾燥させる。
味噌漬け実験報告書写真


②実験2
実験1で使用した味噌とたまりの混合液の中に、麻袋を切り取ったものに入れたメリヤス布小片を入れ、1分程度軽く押し、みそ漬け具合を比較した。
味噌漬け実験報告書写真
麻袋を切り取ったものの中に血液を付着させたメリヤス生地を入れる。


味噌漬け実験報告書写真
麻袋を、味噌とたまりの混合液の中で軽く1分程度押す(左側に見えるのは、1回目に麻袋なしで漬けたもの)


味噌漬け実験報告書写真
引きあげて対照写真(白半袖シャツ)と比較 したところ


味噌漬け実験報告書写真
引きあげて対照写真(白半袖シャツ)と比較 したところ


③実験3
味噌を市販のY味噌に代え、同味噌600gに濃い色のたまり600mlを混ぜ合わせて、実験2と同様の操作を行った。
味噌漬け実験報告書写真
味噌漬け実験報告書写真
味噌とたまりを混ぜているところ


味噌漬け実験報告書写真
取り出したところ


④実験4
赤味噌600gと薄い色のたまり600mlを使用して、実験2、3と同様の操作を行った。
味噌漬け実験報告書写真
⑤実験5
薄い色のたまり600mlのみを使用して、実験2~4と同様の操作を行った。
味噌漬け実験報告書写真
味噌漬け実験報告書写真
色はもっとも薄い


⑥各実験結果の比較
実験1~5の結果着色したメリヤス生地を並べて色の濃さを比較した。
味噌漬け実験報告書写真
味噌漬け実験報告書写真

6.第2実験
赤味噌2400gと薄い色のたまり1200ml、濃い色のたまり3600mlを使用して、実物大の麻袋の中に、鉄紺色ズボン、ねずみ色スポーツシャツ、ステテコ、白半袖シャツ、青色ブリーフの5点の衣類を入れて味噌漬けの実験を行った。ステテコ、半袖シャツは人血が付着している。
味噌漬け実験報告書写真
味噌漬け実験報告書写真
使用した麻袋のサイズは1035mm×625mm


味噌漬け実験報告書写真①使用した味噌とたまりの混合液
赤味噌2400gと薄い色のたまり1200ml、濃い色のたまり3600mlを入れてかき混ぜる。

②5点の衣類を麻袋に入れる


(1)用意した5点の衣類(半袖シャツとステテコには人血を付着させたもの)を、無造作に麻袋の中に入れる。
味噌漬け実験報告書写真
(2)衣類5点が入った状態の麻袋を,衣類の詰まった底部を中心にして丸める(本件5点の衣類の発見時の状態を模する)。
味噌漬け実験報告書写真


③味噌溶液への漬け込み
上記②の麻袋を上記①の味噌溶液の中に漬け込んだ後、約15分間間足で踏みつける作業を行う。この作業は,味噌とたまりの混合液を麻袋の中の衣類にまでしみこませるために行ったものである。
味噌漬け実験報告書写真


④味噌が浸みた状態の確認
以上を行った後に麻袋を味噌の水溶液から取り出し、さらに衣類を麻袋の中から取りだして、その状態を確認する。
味噌漬け実験報告書写真


味噌漬け実験報告書写真
全体の状態


味噌漬け実験報告書写真
スポーツシャツ


味噌漬け実験報告書写真
ブリーフ


味噌漬け実験報告書写真
半袖シャツ


味噌漬け実験報告書写真
ステテコ


麻袋と全ての衣類を取り出したところ
味噌漬け実験報告書写真

味噌漬け実験報告書写真
ステテコ(前側)


味噌漬け実験報告書写真
ステテコ(後ろ側)


味噌漬け実験報告書写真
半袖シャツ(前側)


味噌漬け実験報告書写真
半袖シャツ(後ろ側)


味噌漬け実験報告書写真
対照写真との比較


味噌漬け実験報告書写真
半袖シャツ(対照写真 との比較)


味噌漬け実験報告書写真
ステテコ(対照写真との比較)


なお、対照写真は、昭和42年9月1日付の鑑定嘱託に基づき、静岡県警察本部の鑑定監である佐藤秀一が実施した鑑定書(同年9月20日付・確定記録の第17分冊2348丁以下)に添付された写真を撮影し、それを拡大プリントしたものである。

7.参考実験
今回の実験に先立ち、当救援会では、昨年10月6日に、白ステテコに人血を付着させ、麻袋に入れた状態にして、約1年醸造した赤味噌に漬け込んでいた。
上記10月6日から約6か月を経過した今回の実験に際し、この麻袋を赤味噌から取り出し、その状態を確認した。
味噌漬け実験報告書写真
味噌漬けから約6ヵ月を経過したものであるが、ほとんど味噌の色と同色に染まってしまっている。

以上